Magic Numbers

 

キュレーター:
マーシアル・デフラシュー|Martial Déflacieux (Artistes en résidenceディレクター)
ピエール・ラバ|Pierre Labat

 
アーティスト

カミラ=オリヴェイラ・フェルクロウ|Camila Oliveira Fairclough
クレモン・ミュラン|Clément Murin
エルベ・ブレイエ|Hervé Bréhier
ユーゴ・リベ|Hugo Livet
ジョアンナ・フルニエ|Johanna Fournier
マリー・ランスラン|Marie Lancelin
マリオン・ロビン|Marion Robin
森川 穣|Minoru Morikawa
レミ・ブリエール|Rémy Brière 
セバスチャン・マロベルチ|Sébastien Maloberti
トマ・メレ|Thomas Merret  
ヴァンサン・カルリエ|Vincent Carlier

 

主催: パレ・デ・パリ、Artistes en résidence
後援: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛: クレルモン=フェラン都市圏、オーヴェルニュ地域圏文化振興局、オーヴェルニュ地域圏、ピュイ=ド=ドーム県、クレルモン=フェラン市、クレルモン美術大学

 





 

 

Magic Numbers展にあたって、マーシアル・デフラシューとピエール・ラバは、12人のアーティストにひとつずつ選んでもらいました1桁から24桁までの数で、何かの合計でもいいし、時刻や日付、温度や住所でもよく、数字にくわえ. , ; : ... ( ) – ’ / ’’」も使用可としました。それぞれに、選んだ数の由来と、その数がなぜ自分にとって重要なのかについて説明をつけてもらっています

数と数学をテーマにとりくんでいる現代アーティストは多く、ロマン・オパルカ、メル・ボックナーや河原温などがあげられます。このプロジェクトは、そのようなアーティストたちの探究や制作の延長上に位置づけられます。2013年にペサックで発表したピエール・ラバの「La somme de toutes les images(すべてのイメージの合計)」ともつながっています。こういう手法は、科学がそうであるように一見無味乾燥にみえるきらいがあるにしても、様々なことを明らかにしてくれます。数というものは、翻訳により意味がずれない、あるいはほぼずれることがありません。数にはほとんど限界もありません。そしてこのプロジェクトで重要視しているのは、数そのものというよりは、むしろ、それぞれのアーティストが、数の抽象性と、そこから意味と直感をひきだす自らの能力をどう結びつけるか、ということなのです。(ピエール・ラバ)

 

 

















 

 マリー・ランスラン
Marie Lancelin
0(....................)1

 

0と1のあいだ。
今ここで起ころうとしていることを確実に予測するのは難しい。
それは真実にみえるもの、イデアにみえるものにすぎないだろう。むしろそれは、予測不可能性、不確実性、偶然、そして無限のバリアントをあらわしている。

 

 

カミラ=オリヴェイラ・フェルクロウ
Camila Oliveira Fairclough
00:00

 

0
想像してみて
ええ、コーヒーをいただきます。ありがとう
(...)
計算しないで
名前をつける(昼に夜に)
00:00

 

クレモン・ミュラン
Clément Murin

35

 

私が住んでいるところ(63000フランス共和国 クレルモン=フェラン ラファイエット大通り59番地 )から展覧会場(370-0803 群馬県高崎市大橋町96-2)までの距離を、この紙を折ってあらわすのに必要な回数。
0.1㎜の厚さの紙を42回折れば地球と月の距離の厚みに達するという数学の証明を、この計算はもとにしている。あなたと私を隔てる距離は直線で約9897km。
したがって、この数字を提案することにより私は展覧会場にいることになる。さらには、あなたがこの数字に引き寄せられるのと同じくらい、私はあなたの近くにいるということでもある。

 

 

ユーゴ・リベ
Hugo Livet

1/1000000

 

イギリスの数学者リトルウッドの法則によれば、月に1度くらいの割合で、人は「奇跡」を期待することができる。奇跡とは、100万回に1度おこる特別重要な例外的出来事と定義されている。人は起きて活動しているあいだ、毎秒1回、「出来事」を見聞きする。すると1カ月間では、100万回の出来事を経験することになる。この法則は膨大な数の法則に関連していて、それによれば、十分な数のサンプルがそろえば例外的出来事が起こることを期待できる。つまり、もしこの展覧会にたくさんの人が来てくれれば、奇跡がおこる可能性もあるということだ。それが、この(魔法の)数字を選んだ理由だ。

 

 

エルベ・ブレイエ
Hervé Bréhier

( 8 )
 

(

飽和した                                
                              静寂

)

 

 

ジョアンナ・フルニエ
Johanna Fournier

6.67

 

決まりましたか?
よくあることだけど前から困っている。なかなか決められないのだ。
そこで、どちらかというと思い付きで計算式をつくりあげた。数え、引き算をし、掛け算をし、順序をひっくり返し、繰り上げる。そういった様々な計算をとおして、同じ数字が導かれるようにする。
迷いが大きすぎるときは、そうすればとにかく前に進める。
偶然この数字をみつけて、それが続きに影響をあたえたこともあった。
こうして快適な数の組み合わせが得られたが、快適だからこそ警戒すべきでもある。
この数字は、幸運というよりも警告と考えたい。

 

 

 トマ・メレ
Thomas Merret

6500

 

「c) 空のほんとうの色は何だろう?太陽は?月は?カメレオンは?沈んでいく太陽は赤みをおびることが多いというが、実際にはどんな色をしているのだろう?(太陽の‟平均光度"は何だろう?)」1)
6500は、展覧会場で使われている照明の色温度だ。この数値を熱力学温度であらわすと、濃い赤から深い青にまで対応する。人間の目は知覚した光の構成要素を識別することができないため、環境(ここでは展覧会場)の感覚はうつろいやすく不正確だ。

1) J.L.Austin, Le langage de la perception, Vrin, 2007, p.151-152.

 

 

マリオン・ロビン
Marion Robin

033

 

033。群馬にあるパレ・デ・パリの壁に塗られたペンキの色番号だ。展示場所の特性にかんがみて数字を選んだ。壁の白色を黒で書く。ポートレートの転写シールのように。

 

 

森川 穣
Minoru Morikawa
1990

 

小学生に上がるまで自分のことを「みのる」と呼んでいた。やがて周りの友達からそれはおかしいとからかわれ、やむなく「みのる」は自分のことを「僕」と名乗ることになった。日本語にはフランス語と違って一人称がいくつかある。その中から皆知らないうちに自分の一人称を選ぶのだが、「みのる」は自身を名乗る一人称を見つけられなかった。それ以来四半世紀経った今でもしっくりくる一人称を見つけられずにいる。一人称を選択できなかったことで、自分なんてものはそもそもいなくて、自分は空っぽの存在なのではと思い至るようになった。しかし、最近ではむしろ「みのる」は、無意識ながら「僕」でも「俺」でもない確固たる自分を既に見つけていたのかもしれないと思い直し、「みのる」のことをよく思い出している。

 

 

レミ・ブリエール
Rémy Brière
1946

 

1946年、アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトは、戦後の日本について著名な批評を出版した。『菊と刀』だ。この研究はルーズベルト大統領のもとで政治的にも重要な役割を担ったが、特徴的なのは、アメリカ人兵士の証言をもとに、現地におもむくことなく著されたということである。主観的フィルターをとおして証言から導き出された社会学的知見が、この展覧会の提案つまりアーティストが現地にいかず約束事をきめてとりおこなうという提案にてらして適切だと思われた。

 

 

セバスチャン・マロベルチ
Sébastien Maloberti
70″

 

1980年ロバート・スミスは、アルバム『The Cure』の最後をしめくくる短詩形式の曲Seventy secondsを書いた。
枠組みは超えうること、型は拡張しうることを、この曲名は示している。
それがザ・キュアーのバンド内で物議をかもすことになる。のちにバンドを抜けるドラマーのローレンス・トルハーストにとって、70秒(1分を10秒超えてしまう)はまるで3月32日のように感じられた......。4/4拍子を基調とするニュー・ウェーヴにひたりきった彼には、型をやぶることはできなかった。
彼にバンドを去られてしまうという危機感のなか、リズムメーカーのメンバーを失わないために、ロバート・スミスはしぶしぶ曲名のつづりを変えて53秒を削除し(計算すれば、今なお、そして永遠に241秒になる)、その機にバンド内の役割を規定しなおした。
こうして、Seventy secondsはSeventeen secondsになったのだ。
数年後、当時のことを聞かれたベーシストのサイモン・ギャラップが謎めいた答えを残している。「Fuck'em all! Truth is single-seant race car...」

 

 

ヴァンサン・カルリエ
Vincent Carlier
-36.338041°/ -40.998121°

 

あなたがいる、ここ、パレ・デ・パリの対蹠点の緯度と経度を、この数字はあらわしている。パレ・デ・パリの対蹠点とは、その正反対つまり地球の裏側にある地点をさす。そこまでの距離は約19500kmもあり、飛行機で移動するにしても乗り継ぎなしで飛ぶことはできない。地球の裏側のその場所に行くとしたら、長い旅になるだろう。

 

Website:

 

Curator:
Artistes En Résidence: www.artistesenresidence.fr
Pierre Labat: http://pierrelabat.net/

Artist:
Marie Lancelin: http://wwwmlancelin.blogspot.fr/
Camila Oliveira Fairclough: http://www.camila-oliveira-fairclough.info/
Clément Murin: http://clementmurin.com/
Hugo Livet: http://www.hugolivet.com/
Hervé Bréhier: http://www.hervebrehier.net/
Johanna Fournier: http://www.johannafournier.net/
Thomas Merret: http://www.thomasmerret.com/
Marion Robin: http://www.marionrobin.fr/
Minoru Morikawa: http://minorumorikawa.com/
Rémy Brière: http://www.remybriere.com/
Sébastien Maloberti: http://www.sebastienmaloberti.fr/
Vincent Carlier: http://vincentcarlier.fr/

 

palais des paris