Electric Night vol.7

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Electric Night vol.7
アーティスト:パスカル・バレ|Pascale Barret(ベルギー)

 

日時:2015年12月19日(土)

会場:ウエスト・ワンビル2階
住所:群馬県高崎市八島町58-1

 

 

主催:パレ・デ・パリ
協力:竹中組、原人社
サポート: Wallonie-Bruxelles International

 

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メディアアート×魔女×フェミニズム

パスカル・バレ(Pascale Barret)は、インターネット上の画像に変形をくわえ、それと呼応するパフォーマンスをおこなうメディアアーティスト。electric night vol.7では、「魔女」をキーコンセプトとする彼女の一連の作品を紹介する。そこではフェミニズムの形象とメディアアーティストとしての実践がむすびついている。

魔女×中世

西洋史における魔女は、中世にさかんにおこなわれた魔女狩りの対象となりその犠牲となった10万人ともいわれる女性たちをさしている。なかには薬草をもちいた治療により人々を救う女たちもいたが、中世キリスト教封建社会において彼女たちが力をもつことは悪しきことであり、キリスト教の正統な奇跡とはなりえない異端の魔術だった。魔女は空を飛び、あやしい材料をもちいて毒薬を調合し、人間を動物や物にかえてしまう、シワだらけの顔に大きなかぎ鼻をもつ醜悪な老女として描かれた。そのような魔女のイメージは昔話のなかで語られつづけ、現代のファンタジー小説やホラー映画にも登場する。

魔女×フェミニズム

異端審問の時代がすぎ去り魔女はもはや過去のものとなったはずの19世紀になって、再び魔女への関心がたかまるとともに、魔女像に変容をもたらす転機がおとずれる。海野弘『魔女の世界』(2014 朝日出版社)によれば、19世紀には近代合理主義的な魔女研究が始まるのと並行して「「魔女」の中に失われた想像力をもとめるロマンティックな見方」が近代化への反動としてあらわれた。魔女のロマンティック史観の先駆となったのが、フランスの歴史家ジュール・ミシュレが書いた『魔女』(1862)である。ミシュレは、「キリスト教と結びついた封建的権力による階級的搾取と性的差別の下に置かれた女性」(前掲書)として、つまり“不当な差別”による迫害の被害者として魔女をとらえた。

「『自然』が彼女たちを魔女にした。」――魔女とは、「女性」に固有の「精髄」とその気質なのである。女性は「妖精」として生まれる。規則性と反復される気分の高揚をつうじて、女性はシビュラである。愛によって彼女は「女魔法使い」である。固有の繊細さ、いたずら気(それはしばしば気まぐれで、善意から発するものだ)をつうじて、女性は「魔女」であり、ひとに幸運をさずけ、すくなくともさまざまの悩みを眠りこませ、まぎらせてやる。(ミシュレ『魔女』篠田浩一郎訳 2004 岩波書店)

ミシュレの著作はすぐに目立った影響はもたらさなかったものの、魔女にまつわるイメージは次第に変化しそれまでになかった魅力をたたえていく。ミシュレが賛美をささげた魔女は、20世紀にやがておこるフェミニズム運動のなかで、社会的圧制からの解放をもとめ闘う女性のシンボルとしてとりあげられていくことになる。1970年代のフェミニズム運動期にフランスで創刊されたフェミニズム雑誌Sorcières1975-1852)の題名「魔女」(サブタイトルは「女性は生きる」)がこのことを端的に物語っている。

魔女×アーティスト

魔女とアーティストに共通点があるとすれば、それは社会通念に無批判に服従せずシステムに安住しない態度だろう。彼らは正統な枠の外にいる。魔女が摩訶不思議な事物や不気味な生き物の分泌物をあぜあわせ禁じられた毒薬を調合するように、魔女的メディアアーティストはスクリプト・エラーやバグをあやつり違反的な模倣をくりかえす。

パスカル・バレは、インターネット上にあふれる女性の肖像をあつめている。同時代の人々に魔女的とみられていた女性たちの肖像だ。それらの画像を一部拡大し肉眼では見えなかったピクセルを顕在化させたり、広く知られる女性の肖像を画像読み込みのバグとともに模写させたりする。もってはいけない能力をもってしまった魔女たち。反社会の刻印をおされた能力を行使することは身の破滅につながるのだから自らの正体は隠さなければならない。パスカル・バレの作品に登場する女たちがピクセルやバグというマスクで顔を覆われているように。しかし覆い隠しても女たちの魅力が消え去ることはない。社会から抹殺されるぎりぎりのところで、おしつけられた秩序に抵抗するだろう。コンピュータコードという秩序に魔女的メディアアーティストが抵抗するように。

(フレデリック・ヴェジェル、須藤佳子)

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Pour cette septième soirée d'« electric night », nous sommes heureux de présenter une performance et une exposition de petites œuvres de Pascale Barret.

Cette soirée « electric night vol.7 » a été organisée par le « palais des paris » en partenariat avec Takenaka and Company et Genjinsha, avec le soutient de Wallonie-Bruxelles International.

Le samedi 19 décembre, au 1er étage (2階) du bâtiment West-one (ウエスト・ワンビル) de Takasaki.

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