一世紀にわたって高崎のポップカルチャーを支えてきた赤羽楽器。その歴史がしみこんだ建物を会場として、日々の記憶や時の記憶、美術史や建築史など歴史との対話に重きをおく作家5名による国際現代美術展「タイムカプセル」を開催しました。
この展覧会は、パレ・ド・トーキョー(パリ)での展示をおえて来日した新進気鋭のカンタン・ルフランが、パレ・デ・パリ(大橋町)でのアーティト・イン・レジデンスをとおして滞在制作した作品を軸に構成しています。カンタン・ルフランは、フランスでもっとも歴史のある若手国際公募展ジュンヌ・クレアシオンで、パレ・デ・パリによるResidence Prizeを受賞して来日。「タイムカプセル」では、グラフィック・デザイナーのマリーヌ・ジェゼケルとコラボレーションをしました。さらに、フランスにおけるビデオアートの先駆者として国際的な評価をうけるロベール・カエンが本展覧会に出展。世界各地の美術館で回顧展が開かれるロベール・カエンが美術館外でおこなわれる展覧会に出品するのは稀です。くわえて、国際的に活躍する群馬県出身の写真家・小池浩央、第66回ジュンヌ・クレアシオンに選出された原友香利が出展しました。
展覧会名:「タイムカプセル」
展覧会期:2016年5月1日(日)~5月5日(木)
開催時間:PM 1:00~PM 5:30
展覧会場:旧「赤羽楽器」
会場住所:高崎市あら町49
入場・観覧費:無料
参加アーティスト:
ロベール・カエン|Robert Cahen
原 友香利|Yukari Hara
マリーヌ・ジェゼケル|Marine Jezequel
小池 浩央|Hirohisa Koike
カンタン・ルフラン|Quentin Lefranc
アートディレクター:
フレデリック・ヴェジェル|Frédéric Weigel
須藤 佳子|Yoshiko Suto
主催:パレ・デ・パリ|Palais des paris
特別協力:竹中組、ジュンヌ・クレアシオン、ブザンソン美術高等学院大学
協力:増村酒店、原人社、エム・エー建築デザイン
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、高崎市、高崎市国際交流協会、上毛新聞
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アートを前にして、人は自分自身を投影する。作品を評価しながら自身の価値観をなぞっていることがある。ふと昔の思い出がよみがえることもある。よい作品には鏡のように観る者を映しかえす力がそなわっている。
本展覧会の出発点は赤羽楽器の歴史がしみこんだ建物との出会いだった。高崎まちなかの老舗楽器店。誰もが知っている場所。一度も足を踏み入れたことのない 人ですら、店に通った経験のある人はなおさらのこと、そのときどきの町の思い出とともに記憶している。閉店の知らせに忘れかけていたこの場所が記憶に再浮 上してから数か月後、建物を会場に展覧会をすることになった。
展覧会名は「タイムカプセル」。楽器店と直接関係のある作品は展示しない。距離をおいた作品にこそ、むしろ強く、この場所をめぐる個人的な思い出や、間接 的につながる当時の経験を思い起こす作用があるはずだ。一世紀つづいた店の歴史と、市民ひとりひとりの記憶とを、反射板のようにはねかえしながら結びつけ る展示にしたい。
1階から3階までの会場は、それぞれのフロアーが「時の記憶」のことなる概念に対応している。1階は<ひきとめられた時>、2階は<仮想記憶>、そして3階は<日常にひらくささいな可能性>である。
First Floor <ひきとめられた時>
一階には小池浩央の写真作品とロベール・カエンの映像作品が展示される。小池の一連のポートレート作品では、作家にとって身近な被写体を撮ったスナップ ショットが、ストーリーとして再構築されて提示される。時間のずれのなかに作家の日常は異化される。さりげなくすぎさる日々が写真というメディアに記録さ れる時、そして、あとづけでストーリーがあたえられる時。これら2つの時のへだたりが、写真によみこむ意味をゆさぶる。「タイムカプセル」展では、西洋絵 画を想起させる構図の作品が、会場入り口のあたかも待合室のような空間に展示されている。すべての展示を観おえて会場をあとにする時、この作品に最初にあ たえた意味はいつのまにか変容しているだろう。
≪Sur le quai(ホームで)≫(1978)は、フランスにおけるビデオ・アートの先駆者ロベール・カエンの初期の作品。制作当時、作家は30代前半であり、本展覧会の他の作家たちと同年代であった。作品では、ノルマンディー地方の駅に到着する列車と乗り降りする乗客の様子が16mmのハイスピードカメラをもちい て200コマ/秒で撮影されている。人と列車の動きはひきのばされて浮遊感をおび、時の流れに深みがうまれる。列車はロベール・カエンの作品によくあらわれるテーマであるが、はからずも昭和初期まで楽器店の前を通っていた路面電車を想起させる。
Second Floor <仮想記憶>
2階には、カンタン・ルフランがパレ・デ・パリでのアーティスト・イン・レジデンスをとおして滞在制作し、グラフィック・デザイナーのマリーヌ・ジェゼケ ルとコラボレーションした作品が展示されている。昨年1月におこなわれた第66回ジュンヌ・クレアシオン(於ギャルリー・タデウス・ロパック)にてカンタ ン・ルフランはResidence Prizeを受賞している。
2部屋にわかれた展示は、一見それぞれが独立しているようにみえるが、じつはおなじ要素がもちいられている。絵画のマテリアルを分解したキャンバス枠や画 布、イタリアのデザイナーのエットレ・ソットサスのモチーフが、大きさや配置はことなるが双方の6展示につかわれている。壁に書かれたマラルメの詩篇「骰子一擲」の一節と、床にはられた『エロス+虐殺』(吉田喜重監督、1969年フランス1970年日本公開)から引用されたセリフには、どちらにもおなじ言 葉RIENがもちいられている。2度くりかえされるこれらの要素が、ひとつの写真のネガとポジのように呼応しあい、観る人は2つの部屋を行ったり来たりするだろう。しかし2つの展示を同時に観ることはできない。いま観ている展示にさっき観たばかりの片方の展示を重ね、全体を理解しようとすれば、記憶にたよ るしかない。
カンタン・ルフランにとってアートは閉じられたシステムではない。絵画を分解してその限界を示し、デザインや建築、映画など、アートに隣接する多様な分野の要素を引用することで、どこからがアートなのかをといなおそうとする。
3rd Floor <日常にひらくささいな可能性>
3階にはもともと家族の生活の場であったであろう部屋が5つならび、それぞれに原友香利の作品が展示されている。そのひとつ≪My box of "Everything"≫を例にとろう。原はある日、自分の部屋で箱をみつけた。振れば音がするがはたして何をしまったのか覚えていない。開けて中身を 確認するのは簡単だ。だがあえて蓋をしめたままにする。自分でも何がはいっているのかわからなくなった箱を展示する。作家のこのささいな行為は、海に流し たメッセージボトルのように、誰もが受け手になりうる可能性をひらく。展示空間のなかで「私の箱」を受けとるのは、この作品を観ているあなた自身。鑑賞者が受け手となったとき、作家とのあいだに詩的なコミュニケーションが成立する。
TIME CAPSULE
そもそも、なぜこの展覧会にアートと関係のない名前がついているのか。「タイムカプセル」とは不思議な容器だ。「現今の文書・物品などを収納し、将来の発掘を期待して埋める容器」(広辞苑)に入れるものは、現在の文化を後世へと伝えるもの。しかし現在から未来への時間の流れのなかで人々の生活はかわってい く。現時点で重要な物品が、未来の社会においてもおなじように重要と評価される保証はなにもない。科学的なデータをつかって未来の価値を予測することは不 可能だ。いつ、誰によって発見されるのか予想がつかないし、発見されるかどうかさえ確かではない。未来のある時点から振り返って重要であるはずのものを、 現時点で判断する。それは未来に向けた賭けである。
いまここに、1世紀つづいた店の記憶がある。1世紀むこうには、一体いまの何がのこるのだろう。いや、いまの何をのこしたいのか。いまの賭けの連続が、ひるがえっていまの文化になる。アートもそうして続いていく。賭けの必然的な結果として。
(アートディレクター:フレデリック・ヴェジェル&須藤佳子)
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Exposition « Time Capsule »
L'exposition est ouverte durant le Golden Week, du 1er au 5 mai de 13h00 à 17h30, dans l'ancien magasin « Akabane Gakki » à l'adresse 49-Aramachi-Takasaki-Gunma.
Artistes :
Robert Cahen
Yukari Hara
Marine Jezequel
Hirohisa Koike
Quentin Lefranc
Directeurs artistiques :
Frédéric Weigel & Yoshiko Suto
Organisateur : Palais des paris
Partenaires : Jeune Création, ISBA Besançon/Franche-Comté, entreprise Takenaka-gumi, magasin de vin de Masumura, entreprise Genjinsha et entreprise Ma-design
Parrainages : Ambassade de France / Institut français du Japon, ville de Takasaki, section internationale de Takasaki, journal Jomou Shinbun.
Cette exposition se propose de confronter des propositions d'artistes contemporains, questionnant une certaine relation à la mémoire, au bâtiment « Akabane Gakki » ayant une place particulière dans le contexte de la culture populaire locale de la ville de Takasaki. En effet « Akabane Gakki » est un magasin de musique existant depuis une centaine d'année, il s'est transmis de père en fils. Ce nom reste dans la mémoire de beaucoup de musiciens comme étant le premier endroit où l'on pouvait acheter les guitares électriques dans la région et plus récemment comme un magasin hors du temps d'où sortait de la musique populaire japonaise plus ou moins intemporelle, plus ou moins délavée. Ce magasin a fermé il y a quelques semaines, aucun enfant ne reprenant le commerce. Il reste un bâtiment d'après guerre en fin de vie, avec plusieurs étages qui servaient de commerce, de lieu d'échange, de lieu de vie...
Cette exposition se proposera d'entrer en résonance avec la mémoire vive de ce lieu via des décalages et mises à distance orchestrés par des artistes français et japonais. Ceci permettra au public local de se construire par lui-même son rapport à la mémoire de ce lieu à la fois ancrée dans les esprits et grandement inexplorée (par son architecture étonnante, par ses signes de strates temporelles s'empilant...)
Une capsule temporelle, n'est en soit pas un objet d'art, mais cet objet possède la particularité d'être pensé pour une finalité très précise et pourtant il est totalement imprévisible dans la réalité de son utilisation. En effet si l'objet est conçu pour contenir et faire traverser des choses dans la temps à un public futur, il est néanmoins impossible de savoir ce que le temps nous réserve, quel sera précisément le récepteur de cet objet, et donc quelle sera l'appréciation du contenu de la capsule.
Produire une capsule temporelle, n'est alors qu'un pari, un pari sur le temps, un pari sur ce qu'il restera.
Ce projet d'investissement de 3 étages est construit autour de la résidence de Quentin Lefranc, qui a été sélectionné à la 66e édition de « Jeune Création » pour le prix indépendant du « Palais des paris ». Il produit une intervention in-situ sur l'ensemble d'un étage du bâtiment « Akabane Gakki », dans une collaboration avec la graphiste Marine Jezequel.
D'autres artistes montreront certaines de leurs œuvres en relation avec cette problématique du temps dans les autres étages. Robert Cahen nous fait la grande joie de présenter le film « sur le quai » de 1978, Yukari Hara et Hirohisa Koike présenteront une partie de leurs productions récentes.
Hirohisa Koike
Hirohisa Koike
Robert Cahen
Robert Cahen
Quentin Lefranc
Quentin Lefranc
Quentin Lefranc
Quentin Lefranc
Quentin Lefranc
Quentin Lefranc
Yukari Hara
Yukari Hara
Yukari Hara
Yukari Hara